「3〜4時間級の超重量級ゲームを買ったはいいものの、遊ぶ相手も時間も確保できず、棚の肥やしになっている……」
社会人のボードゲームファンなら誰もが抱える、この深刻な悩み。しかし、ヴィタル・ラセルダ氏の『Speakeasy(スピークイージー)』において、その心配は無用です。
本作には、対人戦の妥協としての「おまけ」ではなく、人間以上に冷酷で精密なマフィアのボス「Jo」と戦う、極めて完成度の高いソロモード(1人プレイモード)が搭載されています。しかし、問題はそのAI「Jo」の挙動を定めた英語ルールです。人間のプレイヤーとは全く異なる例外処理や優先順位が設定されているため、ここで翻訳に躓き、プレイを断念してしまう方が後を絶ちません。
本連載の番外編にして真の最終回となる第4回では、あなたの最大のライバルとなるオートマ「Jo」の処理手順、難易度調整の仕組み、そしてソロ特有のFAQを徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたは今夜からでも、1920年代のマンハッタンを舞台にした孤独で熱い覇権争いに没頭できるはずです。
※本記事は、Eagle-Gryphon Games発行の公式ルールドキュメント(Speakeasy.Solo Rules.en.pdf)を基に、Web編集者が独自の視点で解釈・意訳・構造化した解説記事です。
この記事のURL:https://iijo.net/speakesy-solo
ライバル「Jo」の誕生 ― ソロモードのセットアップと難易度調整

ソロモードでは、あなたは「Jo」と呼ばれるモブスター・ボット(AI)を相手に戦います 。Joは人間のような複雑なリソース管理を行わず、ダイレクトに盤面を制圧してくる恐ろしい存在です。
Joのセットアップの例外
基本的には2人プレイ用のセットアップを行いますが、Joには以下の特別な変更が適用されます。
- リソースの免除: Joは「Strength(武力)」マーカーや、「トラック(Truck)」を使用しません(箱に戻します) 。
- 初期資金ゼロ: Joはお金を持たない状態でゲームを開始します 。
- 初期配置:
- ファミリーメンバーと帳簿(Book)をJoのオペレーションボードの横に置きます 。
- Downtown, Midtown, Uptownの各エリア支配(Zone Control)トラックにマーカーを1つずつ置きます 。
- 4人のCapo(幹部)をボード横に置き、各オペレーショントラックのマーカーを「レベル1」にセットします 。
- 8つのSpeakeasy(隠れ酒場)、3つのナイトクラブ、3つのカジノをボードの上部に左から右へと並べます 。
- 蒸留所(Stills)は一時的にボードの横に置きます 。
- Infamy(悪名)マーカーをトラックの「5」のスペースに配置します 。
オペレーションレベルの初期化
- 「0番デッキ」をシャッフルし、一番上のカードをめくります 。
- めくられたカードの指示に従い、Joの対応するオペレーションレベルを1つ上げます 。
- もしカードがオペレーション上昇を指示していない場合は、デッキをシャッフルし直して新しいカードをめくります 。その後、使用したカードは捨て札にします 。
Joのアクションデッキと難易度(Difficulty)の選択
Joの行動は、1から4までの「アクションデッキ」と、難易度調整用の「0番デッキ」によって決定されます 。 まず、2番デッキ(5枚構成)からランダムに2枚を見ずに箱に戻し、1〜4のすべてのデッキを「3枚」にします 。 その後、あなたの腕前に合わせて以下の4段階から難易度を選び、0番デッキのカードと入れ替えます 。
- Duck Soup (Easy / 初級): デッキ1から1枚、デッキ2から2枚、デッキ3から2枚、デッキ4から1枚を、0番デッキのカードとランダムに入れ替えます 。
- Gangster (Normal / 中級): デッキ2から2枚、デッキ3から2枚を、0番デッキと入れ替えます 。
- Consigliere (Hard / 上級): デッキ2から1枚、デッキ3から1枚を、0番デッキと入れ替えます 。
- Brick Wall (Very Hard / 悪夢): 入れ替えを行わず、デッキ1〜4の全12枚をそのまま使用します 。
人知を超えたマフィア ― Joの基本ルールと手番の処理
Joは人間のプレイヤーが苦労する「コスト支払い」や「条件達成」をいとも簡単に無視して行動します。この圧倒的な理不尽さこそが、ラセルダ氏のソロモードの醍醐味です。
Joの絶対的な優位性(基本ルール)
- コストと恩恵の無視: Joは施設(建物)や樽のコストを一切支払いません 。また、常に現金を獲得します 。
- 武力の常備: Joは武力(Strength)を必要とするアクション(建物の防衛、乗っ取り、密輸船の襲撃など)において、常に「必要なだけの武力を持っている」として扱われます 。そのため、チンピラ(Goon)を雇ったり、アソシエイトを獲得したりしません 。
- カード効果の無視: Joはオペレーションカードのプレイや破棄を行わず、Helperカードの恩恵やCityタイルの恩恵も受けません 。
- 資金の消費: Joが唯一お金を支払うのは、「モブ・ウォー(抗争)」で他のマフィアから攻撃され、建物を防衛する時だけです 。この時、防衛する建物ごとに、相手の武力と同額の現金を支払います 。もしお金が足りない場合は、持っている全額を支払います 。
Joの手番(ターン)の流れ
- カードの公開と配置: Joのアクションデッキの一番上をめくり、指示されたロケーションの「一番左の空いている人物(Person)」にCapoを派遣します 。一番左が埋まっていれば一番右に配置します 。
- 通常アクションの無視: Joは配置したロケーション本来の恩恵やアクションを完全に無視し、代わりに「めくったアクションカードに書かれているアクション」を実行します 。
- 配置できなかった場合: もし配置先のスペースがあなたのCapoで両方埋まっている場合、Joは一番左のCapoを「公園(Park)」に移動させ、恩恵を獲得します 。
- 再ドローの条件: もしスペースが「Jo自身のCapo」だけで完全にブロックされている場合、あるいは公園(Park)が満員の場合は、Capoを配置できるロケーションが出るまでカードを引き直します 。使わなかったカードはシャッフルしてデッキの下に戻します 。
- アクションの解決: アクションカードの効果を「上から下、左から右」の順で解決し、その後カードを捨て札にします(このカードは二度と使われません) 。
Joの主要アクション解剖:容赦なき制圧のメカニズム

Joのカードに記されたアクションは、人間のプレイヤーとは異なる特殊なルールで処理されます。この優先順位を理解することが、ソロ攻略の鍵です。
密造酒の配達と販売
- 配達(Deliver Barrels): Joはトラックを使わず、メインボードのどこへでも配達可能です 。配達できる数は「Fleet Operations」のレベルに依存します 。Joはまず自分の蒸留所(Stills)から樽を取り、次に最も安い船から取ります 。そして、より価値の高い稼働中の建物へ優先して配達します 。
- 販売(Sell Barrels): 販売数は「Party Operations」のレベルに依存します。販売価格は、Infamy(悪名)トラックのJoの位置によって決まります 。Joはより価値の高い稼働中の建物から優先して樽を販売します 。
建物の建設と陣取り
- Joが建物を建設する際、通常の配置ルールには従いますが、恩恵は得ず、コストも支払いません 。また、Joは決して建物を「アップグレード」しません 。
- 建設場所の決定: どこに建てるかを決めるため、「地区(District)デッキ」からカードを引きます 。もし引いた地区に空きがない(または乗っ取れない)場合は、建設可能な場所が出るまでカードを引き続けます 。
- 引いた地区カードに「ファミリーメンバー」のシンボルがあった場合、Joのサプライからファミリーメンバーを1人、指定のドックへ送り込みます 。以降、シンボルが出ても無視します 。
帳簿の操作(Cooked Books)による目標達成
Joの帳簿(Books)は常に利用可能な状態ですが、配置するには目標(Goal)を達成している必要があります 。Joは以下の厳密な優先順位で帳簿を配置しようとします 。
- エリア目標(Zone Goals): 最も低いオペレーションレベルを上げ(上から下、左から右の優先順位)、配置した帳簿1つにつき$20を獲得します 。
- 市庁舎(City Hall): 配置した帳簿1つにつき$20を獲得します 。
- ドック(Docks): 配置した帳簿1つにつき$15を獲得します 。
- 悪名トラック(Infamy track): 最も低いオペレーションレベルを上げ、配置した帳簿1つにつき$10を獲得します 。
- 例外処理: もし上記のスペースに配置した帳簿が「3つ未満」だった場合、Joはセントラルパークの利用可能な一番左のスペースに「1つだけ」帳簿を配置します 。この時、目標や恩恵は無視しますが、代わりに即座に$10を獲得します 。
最終得点計算と、ソロプレイ用Speakeasy FAQ 5選

過酷な1920年代を生き抜き、ついに決算の時(1933年)を迎えたあなたの前に、最後の壁が立ちはだかります。
勝利条件と最終得点計算
- 勝利条件: ゲーム終了時、Joよりも多くの「お金(Money)」を持っていればあなたの勝利です 。
- 得点の集計: あなたとJoは、通常の2〜4人プレイ時と全く同じ方法(お金、防衛された建物、Helperカードなど)で得点を計算します 。
- Joの追加ボーナス: Joはさらに、自身のオペレーションボード上にある「Cityタイル」1枚につき、$1を追加で獲得します 。
ソロ用FAQ 5選 ― 処理に迷ったらここをチェック!
- Q1:Joは建物をアップグレードして高級クラブにしますか?
- A: いいえ、Joは自身の建物を決してアップグレードしません 。
- Q2:Joが「モブ・ウォー(抗争)」で防衛資金が足りない場合はどうなりますか?
- A: Joは、その時点で持っているお金を全額支払います(それ以上のペナルティはありません) 。
- Q3:Joの建設場所を決める際、引いた地区カードの場所に空きがない場合は?
- A: Joが建設(または乗っ取り)できる場所が見つかるまで、地区カードを連続で引き続けます 。
- Q4:地区カードを引いた際、ファミリーメンバーのシンボルが出たら?
- A: 最初の1回だけ、指定のドックにJoのファミリーメンバーを配置します 。それ以降に引いたカードのシンボルはすべて無視します 。
- Q5:Joは「武力(Strength)」のコストをどうやって支払いますか?
- A: 支払いません。Joは建物の防衛や乗っ取りに必要な武力を「常に満たしている」とみなされるため、チンピラなどの武力リソースを消費することなくアクションを成功させます 。
まとめ:孤独なマフィアの頂点へ
人間離れしたチート能力で盤面を荒らし回る「Jo」。しかし、彼のアクションはカードと優先順位のアルゴリズムに縛られています。Joの行動規則を逆手に取り、次に彼が狙うエリアを先読みしてピンポイントで妨害することこそが、ソロモード攻略の最大の鍵となります。
対人戦に向けた練習として、あるいは最高難易度「Brick Wall」を打倒する究極のパズルとして、『Speakeasy』のソロモードをぜひ骨の髄まで味わい尽くしてください。
- 第1回記事:マンハッタンの帝王学 ― 概要・準備・基本構造編
- https://iijo.net/speakeasy-part1/
- 第2回記事:禁酒法時代の裏ビジネス ― 全アクション徹底解説編
- https://iijo.net/speakeasy-part2/
- 第3回記事:富の構築とFAQ ― 収入・最終計算・疑問解決編
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- 第4回記事:孤高の帝王学 ― ソロモード「Jo」完全対策・オートマ処理編(本記事)
- https://iijo.net/speakeasy-solo/



